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とまどうペリカン

井上陽水さんの声を聞くとなんだか落ち着く。

理由は両親が好きでよく子守唄代わりに聴かされていたからだと思う。

母は「とまどうペリカン」という曲が好きでよく口ずさんでいた。
ぅわたしはー、とまどぉうーペリーカァーンー♫

これってさ、まるでお父さんとお母さんみたいなのっ♡
って言いながら…。

生来のコメディエンヌだった母が踊りながら歌うのでなんとなくコミカルな曲だと思いこんでいた。ペリカンだし。

先日テレビで陽水が歌うところ聞いて、歌詞を見て、ちょっとびっくりしてしまった。ちゃんと聞いたのは初めてだったかも。

こんなに哀しくてロマンティックな曲だったなんて…。
そして母は父のことが最期まで本当に好きだったんだなぁ、と思った。
たぶん子どもたちよりずっと。

父は、私が中学の時から都内に拠点を移し家にほとんど帰って来なくなった。
母が入院した時も出張を理由にほとんど見舞いにも来なくてひどいんじゃないってまわりからよく言われた。
たまに来てもわーっと自分の仕事の自慢話などをしてすぐに帰っていく。
バタンと閉じられたドアをうっとりとみつめ、「ねぇ、なつ、お父さんかっこいいねぇ、あのトレンチコートさぁ、」とか毎回言っていた。そしてお母さんは可愛かったかなぁとか言っていた。一体何を言ってるんだ、余命3ヶ月なのに、この夫婦はなにを考えてるんだよもっと根本的な話をしてくれよとその時は思っていた。お洒落の話とかお菓子の話なんてどうでもいいよ、って。

でも、違ったの。父が来る前に震える手でお化粧する母の素敵さが、可愛さが今は痛い位に分かる。
いっつもバッチリ決めて面白おかしい話だけして帰って行った父の心もわかる。
(いつもいいとこ取りでなにカッコつけてんだよ、ばーか(¬_¬)ともちょっと思うけど。)
お葬式で初めて見た父の泣きかたが、慟哭に近いものだったのもびっくりだった。

確かにふたりは恋人同士だったんだなぁ…。

50代半ばで亡くなったのでそれを父のせいにする人は親戚含めたくさんいた。
葬儀の朝、私の携帯に全然知らない番号から「〇〇(父の名前)は最低男」とCメールが入っていて怒りの後、脱力した。
娘の携帯にこんなメールわざわざ入れなくってもさぁ…。心ないよなぁ(寂)

この人は母の本当の恋を知らないのだ。 
でも私も含め誰にも本当にはわからないんだろうな。
2人だけの……暗くて、甘い世界。
でもひりひりするような。
きっと恋ってそういうもの。
ふたりは最期までそれを共有してたんじゃないかな。やがて愛になり情になりそれはなくなってしまう夫婦が多いけど。
お母さん、ごめんね。これって本当はコミックソングじゃなくて本物のラブソングだったんだね…ってちょっと泣いた。
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夜を二人でゆくのなら
あなたが邪魔者を消して
あとを私がついてゆく
あなたの足あとを消して
…中略…
あなたひとりで走るなら
私が遠くはぐれたら
立ち止まらずに振り向いて
危険は前にもあるから
どこからでもあなたは見えるから 
爪を休め眠る時も

あなたライオン
たて髪ゆらし
ほえるライオン
お腹を空かせ
あなたライオン
闇に怯えて
私はとまどうペリカン

私はあなたを愛してとまどうペリカン

http://youtu.be/33rpWofcn9M