あしあとをよむ

あしあとをよんでおもいだす

この時代に狩りをするということ。

岐阜に素敵な施設がある。
みんなの森 メディアコスモスというのだが、
そこで千松信也さんという方のトークイベントに行ってきた。
千松さんは猟師だ。
猟師という生き方は思った以上に深く自然でその行為は探偵みたいでおもしろかった。

千松さんは鉄砲による猟は行わず
伝統のわな猟(くくりわな猟)、網猟(無双網猟)を行う。

スライドを見て淡々とどのように狩りをするのか説明してくれる。
まず森の中でけもの道を探す。
私は森やその類が好きでよく行くけど植物に夢中でそういえばけもの道って見てなかった。
スライドでみるとかなりの種類のけもの道があってびっくり。
蹄の後や糞の状態からどれ位の大きさか、動きはどんな感じか予測し、罠の位置や大きさを決める。例えば糞に柿の種が混じっていたら近くの柿の樹を探しそこから樹を引っ掻いた後や泥を擦り付けた形跡でどれ位の背丈かとかどこを中心に活動してるのか、目星をつける。歩幅や癖や好みも計算して罠の場所を決める。
罠に掛かったら、猪は眉間を鹿は後頭部を棍棒で殴り失神させ、心臓や頸動脈を切り、失血死させる。ここが一番危険なところで鉄砲を使った方が安全だが千松さんは敢えて使わない。
鉄砲嫌いなんで、と笑っていたけど
後から失神させて血を抜いて死に至らしめる時まで結構な時間がありなにがしかを考える、とぼそりと言っていた。
きっと千松さんはそのなにがしかをいつも忘れずに考え続けたい人なんだと思った。

その後が更に大変で洗い場まで運び、血を抜き内蔵を抜き、洗い、解体し、よく冷やし、皮を剥ぎ、そしてやっと食肉にする。

食肉は普通の肉の他にハムやベーコン、干し肉に。脂は傷薬や、保湿クリームに。毛皮はしり当てや鞄やペットボトルのカバーに。腸はソーセージに、胆嚢は胃薬に(後ほど食べさせて貰った!苦かった…けど、好きかも。)まさに使い切る。
調理した肉たちは純粋に美味しそうだった。

とても興味深い映像だったが
ここに映るのはやはり微妙に眼を背けたくなる光景も含まれている。
罠に掛かった時の獣の眼、失神した顔、捌かれてゆく姿…。
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印象に残ったのは司会者が
この時代に時給自足とは、そして肉を食べる為にこんなに行程をふんで素晴らしいみたいなことを言った時
いや、自分自身が楽な方楽な方に流れて行ったら猟をする事になっていた、というところ。 
千松さんは動物がとても好きで人間より好きで本当に動物に向き合いたいと願い、だからこそ
一番嫌な部分を金を払う事でごまかすことが出来ず、自分で殺してそれを食べること、使い切ることですごく心が楽になったということ。

獲るのは自分や家族や友達が食べる分だけ。
金で肉を売ることは猪や鹿に失礼だということ。

終始穏やかで、カップラーメンも食べるし(たまに猪肉をのせてみるんだってw)ツイッターもされている。魚はスーパーで買ってくるそうだ。そんな風になんだか肩の力が抜けてるのもいい。
愛妻家で2人のお子さんの父でもある。
現金収入は週4日の運送業で賄っている。
自分が何者であるか、というのは何で金を得ているかではない、とも言っていた。

人間が自然をどうにかするのではなく恵みを頂いている、だから今増えすぎて害獣になりつつある鹿を行政に(人間に)言われたから余分に獲る、とかいうことは絶対にしないと言う。

自然に、その大いなる営みに畏敬の念を抱く、
人間は本当は自然の一部でその自然の連鎖の中に入りたい、猟師ならばそれが出来る、という純粋な思いが清々しかった。

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しかし、名古屋はいつまでも馴染めないが岐阜に行くと心がホッとしてすぅ〜っとするな。
こんなに良質イベントも無料で人がぎうぎうでないっていうのも最高。
山っていいな〜!長良川もいい! 
豊かだ。

千松信也さんインタビュー
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