あしあとをよむ

あしあとをよんでおもいだす

北斎とその娘

私にとっての日本のイメージって江戸時代なんです。まぁ好きなんです。

20代の頃、山本周五郎にハマりまして。あとやっぱり北斎が好き、というのが大きい。

優れた浮世絵師の中でもやはり北斎は別格で。

赤富士やビックウェーブそれに歌舞伎役者の顔なんかが有名ですが北斎ブルーと言われるなんとも言えない青の世界や、密かに人気の高い西瓜の絵などいい画が沢山あります。
その中でもかなり好きな
「雪中虎図」Old tiger in the snow.

北斎最晩年に書き上げたと言われています。
北斎が最後の最後にたどり着いた言葉では決してあらわせない世界。北斎自身を表しているとも言われています。
画に対する純粋な情熱と諦観とそれを超えた可能性。この画をみていると不思議な浮遊感でたまらなくしあわせな気持ちになる。まるで雪なのにとてもあたたかく感じる日のように。北斎はある年齢から数年間毎日虎の画を描き続けていたのですがその理由が孫の放蕩を辞めさせる願掛けの為というなんとも可笑しいような切ない様な。その内に虎を描くこと自体に夢中になったようです。
北斎には2人の妻がいてそれぞれ一男二女がいたと言われています。
三女のお栄(画号は葛飾応為かつしかおうい。
北斎がお栄を呼ぶ時おーい、おーいと呼んでたからだそう、ちょっとひどい、です。)
北斎の才能を受け継ぎ大変に画が上手く子供の中で唯一絵師として生計を立てていました。同業の絵師のもとに嫁ぎますが夫の画の拙さを指摘し離縁され、また北斎のもとに戻り画を描いて暮らします。北斎の作品のいくつかは応為の作ではないかと言われていて(合作もあり)本人の名の作品は大変少なく現存するのは10点ほど。
その数少ない作品のうちの1つ、

構図といいタッチといい全く新しい浮世絵の世界を予感させませんか。モダン。2つの提灯それぞれに応と為ってさりげなく自分のサインを淡く浮かびあがらせるなんて、粋。
そのお栄を主人公にした杉浦日向子さんの漫画
百日紅さるすべり)お栄がまだ嫁に行く前の若かりし時のお話。もちろんこの時も北斎と暮らしています。

百日紅 (上) (ちくま文庫)

百日紅 (上) (ちくま文庫)

 
百日紅 (下) (ちくま文庫)

百日紅 (下) (ちくま文庫)

 

杉浦さんの頭の中ってものすごい広い感じがするのです。

美しい空白があって広々してる。
表現者の頭の中の広さって私にとってすごく重要で、それはこちらの想像力をどこまでも伸ばさせてくれるというか。気持ちがいいのです。一コマ、に江戸の街がひろがっていてまるでそこに入り込んで歩いている錯覚に陥る位自由に。空白の使い方がすごい、行間を読ませるというか。絵も超上手いって訳ではないんだが、なんかめっちゃかっこいいの。
お栄ってなんか北斎守護天使みたいな存在だと思う。言葉とか態度とかめっちゃぶっきらぼうなんだが。それがまたいいんだよね。それでも1番大切な部分をわかって護ってあげるというか。そういう人って必ずだれにでも存在すると思う。血縁とかは関係なくね。
"しあわせ"のこと考えてたらこの漫画の北斎とお栄のことが浮かんできた。

江戸一番の絵師と言われながら80歳を超えてなお、猫一匹も満足に描けない、と悔し泣きしていた北斎。そこはクールに真剣に慰めるお栄。自宅の炬燵の中でただ毎日描き続ける北斎。一緒に描き続けるぶっきらぼうなお栄、

芳しいな。

この人も相当江戸をかんじさせる。麗しい。


椎名林檎 - 長く短い祭 from百鬼夜行

"永遠なんて素っ気ないね、ほんのかりそめが良いね"

 

なんてニクい歌詞さ。わっしょい♡夏ですね。